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循環器疾患予防・疫学研究

背景

 日常診療を行うにあたって基本的なことは、ある疾患がどのくらいの人を悩ましており、自然予後はどのようなものであるかを知っている事であると思います。この事を知らずして診断法や治療法を論議することはできないと考えます。日本人の冠動脈疾患の罹患率は欧米人に比較して低いものであることが知られています。しかし、とくに女性におけるリスク因子は欧米人と同様なものかどうか明らかではないものと考えます。また、慢性心不全の人口当たりの発症率や生命予後など基本的なことが日本人ではどのようなものであるかも十分解明されているとは言えません。Evidence-based medicineが重要視され、国内でも各学会で診療ガイドライン作りがなされており、循環器領域でも沢山のものが公表されております。しかし、このエビデンスは欧米人を対象とした論文などを元にしていることが少なくなく、日本人で証明されていないものもあります。

 本邦では高齢化が進み、医療資源を如何に適正に配分するかが重要課題となっております。国策として将来の医療をどのような方向に舵とりするかを決定するのには、日本人を対象としたエビデンスがますます重要視されてくることは明らかです。また、このような大所高所の理由のみならず、われわれの普段診ている循環器疾患患者さんの実態、そのリスク因子、早期マ−カ−さらに予防法を知りたいというモチ−フで「疫学・予防医学」研究を行っています。

進行中の研究

現在、以下の2つの研究が進行中です。

1) 岩手県南の一関市東山町地区での「東山心臓血管コホ−ト研究」は、当地区の保健センタ-の協力の下に平成14年から実施しております。心エコ−図検査などの高度な循環器系検査をすでに延べ2000名以上の住民の方に受けていただき、現在、その後の追跡調査と更なるコホ−トの拡大を行なっております。
   
2) もう一つは、学内の各科(衛生学公衆衛生学講座、神経内科、脳神経外科)、岩手県予防医学協会、岩手県などとの共同研究で「岩手県北コホ−ト研究」を行なっております。この研究は、岩手県北地域で基本健康診査を受けられた2.6万人を対象としております。この県北地域で平行して心疾患登録調査と脳卒中登録調査を実施し、このコホ−トの心血管事故の追跡を行なっております。
また、この登録調査には当科などから当該病院に出向しているドクタ−に多忙にもかかわらず協力していただいております。

 このようにこれらの研究は、学内のみならず学外の多くの医療関係者との協力で成り立っております。皆で互いに協力し、相談をしながら力と智慧を出し合って研究を進めております。このような研究は岩手だからこそできる研究であり、人口が多く、異動の多い都会ではできないものです。上記の2つのコホ-ト研究を大きく育ててわれわれの資産とし、われわれのエビデンス作りの基盤にしたいものと考えております。